医学部の卒業後の進路は?研修医・専攻医・専門医の流れを高校生にもわかりやすく解説

医学部を志望する高校生や保護者の方にとって、「医学部に合格したあと、どのようなキャリアを歩むのか」はとても大切なポイントです。
医学部は6年間学び、その後に医師国家試験を受ける、という大まかな流れはよく知られていますが、「研修医」「専攻医」「専門医」といった言葉の具体的な違いや、大学ごとの進路の傾向まではなかなかイメージしづらいものです。

この記事では、医学部の卒業後の主な進路と、研修医から専攻医・専門医になるまでの流れを高校生にもわかりやすく解説します。さらに、いくつかの大学の進路データをもとにした比較表も紹介し、医学部受験前に知っておきたいポイントをまとめます。


目次

医学部卒業後の主な進路は4パターン

医学部医学科を卒業した学生の進路は、大きく次の4つに分類できます。

1. 臨床医として働く(研修医 → 専攻医 → 専門医)

もっとも一般的な進路が、臨床医として患者さんを診る道です。
医学部を卒業し、医師国家試験に合格すると、まず初期研修医として病院で働き始め、その後専攻医として専門分野を深め、最終的に専門医の資格取得を目指します。

2. 大学院に進学して研究者の道へ

臨床医として診療を行うだけでなく、がんや難病の研究などを通して新しい医療を生み出したいという人は、大学院に進学して研究者としてのキャリアを歩みます。
臨床を続けながら大学院に進む人や、いったん臨床医として経験を積んだあとに研究の道へ進む人もいます。

3. 行政・公衆衛生分野で活躍する医師

厚生労働省や地方自治体などで、医療行政・公衆衛生・感染症対策などに携わる医師もいます。
コロナ禍をきっかけに、臨床現場だけでなく、社会全体の仕組みづくりに関わる医師の重要性がより注目されるようになりました。

4. 企業・ベンチャーで活躍する医師

製薬会社や医療機器メーカー、医療AIやデジタルヘルスを手がけるベンチャー企業など、民間企業で活躍する医師も増えています。
新しい薬や医療技術、医療データの活用、スタートアップの起業など、「医師+ビジネス」「医師+テクノロジー」というキャリアの選び方も現実的な選択肢になっています。


図解:医学部卒業後〜研修医・専攻医・専門医までの流れ

ここからは、医学部卒業後の一般的なキャリアの流れを「図解」イメージで整理してみます。

【医学部卒業後のキャリアフロー】

(高校)

医学部医学科(6年間)
・教養科目+基礎医学・臨床医学の学習
・病院実習(臨床実習)

医師国家試験 合格
医師免許取得

初期研修医(2年間)
・大学病院 or 研修指定病院に所属
・内科・外科・救急・小児科・産婦人科・精神科などをローテーション
・医師としての「土台」をつくる期間

専攻医(3〜6年間)
・内科、外科、小児科、産婦人科、整形外科、皮膚科、精神科…などから専門を選択
・専門医制度の研修プログラムに沿って経験を積む

専門医
・専門医資格を取得し、一人前の臨床医として独り立ち
・その後もサブスペシャリティ(さらに細かい専門)や大学院進学など、キャリアの選択肢が広がる

高校生の段階では、「医学部に合格したらゴール」と考えがちですが、実際には初期研修〜専攻医〜専門医まで含めて10年前後の長い道のりであることを理解しておくことが大切です。


「研修医」「専攻医」とは?高校生にもわかるように解説

初期研修医(いわゆる研修医)とは?

初期研修医は、医学部卒業後に必ず2年間行うことが義務づけられている研修期間です。
大学病院や市中病院などで、複数の診療科をローテーションしながら、医師としての基本的な技術・知識・態度を身につけます。

  • 期間:原則2年間
  • 所属:大学病院または臨床研修指定病院
  • 給与:病院によって異なるが、おおむね月30〜45万円程度が多い
  • 目的:幅広い診療科を経験し、どの科に進むかを見極める

高校生や保護者の方にとっては、「まずは医師としての土台づくりの2年間」だとイメージしておくとわかりやすいでしょう。

専攻医とは?専門医になるためのトレーニング

専攻医とは、初期研修を終えた後に、自分の選んだ診療科の専門医になるための研修を受けている医師のことです。
たとえば、内科専門医、小児科専門医、外科専門医などの資格を目指して、3〜6年間のプログラムに参加します。

  • 期間:診療科によって3〜6年間程度
  • 例:
    ・内科専門医:3年前後のプログラム
    ・外科専門医:5〜6年前後のプログラム
    ・小児科・産婦人科なども、それぞれ所定の年数の研修が必要
  • 役割:より高度で専門性の高い診療を行いつつ、専門医試験の受験資格を得る

専攻医の期間は、医師としてのキャリアの“軸”を固める大事なステップであり、どの地域・どの病院で研修するかによって、得られる経験も大きく変わります。


各大学の卒業後進路データをもとにした比較表

ここからは、いくつかの大学が公開している進路データをもとに、「医学部卒業後にどのような割合で臨床・大学院・その他の進路に進んでいるか」を比較してみます。
※数字は公開情報をもとにしたおおよその傾向であり、年度によって変動があります。

大学名卒業後の主な進路の特徴臨床研修・就職大学院・研究その他
東京大学 医学部医学科多くが臨床研修医として大学病院・市中病院で研修を開始。
一部は基礎医学研究や医療行政・国際医療などへ進む。
おおよそ約9割が臨床研修・臨床系進路基礎医学研究(大学院等)に約1割程度医療行政・国際医療協力などに少数
藤田医科大学 医学部医学科自学の大学病院・関連病院だけでなく、全国の大学病院・一般病院に多数進路。
医師国家試験の合格率も高水準で推移。
約96〜97%(自学病院・他大学病院・一般病院を合わせた臨床系進路)
※病院(本学)+病院(他大学)+病院(一般)合計
直近数年は「進学(大学院)」はごく少数〜0%その他が数%(留学準備・休養など)
徳島大学 医学部医学科卒業者のほぼ全員が就職または進学のいずれかの進路を決定。
医学科では就職希望者は全員就職しており、臨床研修医としてのスタートが中心。
就職(多くは臨床研修医等)が約96%大学院進学はその年度では0%(別ルートでの進学はありうる)その他が数%(進学以外の事情・準備など)

※上記はイメージしやすくするために整理したもので、詳細は各大学の公式サイトやパンフレットで確認することをおすすめします。


医学部受験前に知っておきたい3つのポイント

1. 医師として独り立ちするまで「10年前後」の道のり

医学部は6年間ですが、その後に初期研修2年+専攻医3〜6年が続きます。
つまり、医学部合格から専門医として独り立ちするまで、最短でも9〜12年程度かかる、長期戦の進路だと言えます。

受験勉強の段階から、「長く学び続ける覚悟」「継続して努力できるかどうか」という視点も大切になります。

2. 進路や専門科は在学中・研修中に変わることも多い

医学部に入学した時点では「外科医になりたい」「小児科医になりたい」と決めていても、臨床実習や初期研修でさまざまな科を経験する中で、希望が変わることは珍しくありません。
そのため、大学選びでは次のような点もチェックしておくと安心です。

  • 附属病院や関連病院の規模・症例数
  • 救急医療、がん医療、小児医療など、どの分野に強みがあるか
  • 大学院・研究の体制(研究者を目指す場合)

3. 医師のキャリアは「病院で働く」だけではない

医学部卒業後の進路は、臨床医だけにとどまりません
研究者、大学教員、行政医、企業のメディカル職、医療系スタートアップの起業など、社会のさまざまな場で活躍できる可能性があります。

「人の役に立ちたい」「社会の仕組みを変えたい」「新しい医療技術をつくりたい」など、自分がどのような形で医療に関わっていきたいかを考えながら、大学・学費・カリキュラム・立地なども比較していくと、納得感のある進路選びがしやすくなります。


まとめ:卒業後の進路をイメージして医学部受験に臨もう

医学部の卒業後は、初期研修 → 専攻医 → 専門医というステップを踏んで、ようやく一人前の臨床医として独り立ちします。
その一方で、大学院進学や行政・企業でのキャリアなど、医師としての知識・経験を活かせるフィールドは年々広がっています。

医学部受験を考えている高校生・保護者の方は、
「どの医学部に入るか」だけでなく、「卒業後にどのような医師・専門家として活躍したいか」までイメージしながら情報収集を進めてみてください。

本記事が、医学部の卒業後の進路を理解し、志望校選びや将来設計を考えるきっかけになれば幸いです。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

めでぃゆに先生

・現役の大学職員。
・医学部教務部でカリキュラム調整、学生対応、入試関連業務などの担当
・文部科学省からの通知や制度変更に関する学内の対応にも携わってます。
・前職では現状や進路に悩む方々向けのカウンセリング業務に従事
・7年間で1,000名以上の進路指導

ブログを通じて、「新しい」そして「正しい」知識を皆さんに届けたいという思いから、情報発信を始めました。
現役の大学職員ならではの視点から、価値ある教育情報をお届けしていきます!

コメント

コメントする

目次